Witch さんの感想・評価
4.8
ハルの傑出したキャラに型破りのビジネス展開とスピード感で2クールを痛快に疾走!!
【レビューNo.180】(初回登録:2025/4/20)
コミック原作で2024年作品。全26話。
(ストーリー)
中学時代、カツアゲに遭遇した平学(ガク)とその場に出くわした天王寺陽(ハル)。
・ハルは半グレ連中を殴り倒してガクを助ける
・ガクはハッキングにて監視カメラの暴力シーン映像を消してハルを助ける
以来2人は友人となる。
月日は流れ大学の就活時代、ガクは生来のコミュ障のために全ての企業に面接
で落とされてしまう。
一方のハルは超巨大企業ドラゴンバンクに就職が決まっていたが、ガクの元に
現れ、「一兆ドル稼ぐため、一緒に起業しよう」と提案してくるのだった。
こうして2人のゼロからの挑戦が幕を開ける。
(評 価)
・圧倒的に傑出したハルのキャラクター性
本作はとにかくハルのキャラクター性が傑出しています。
・長髪のイケメンで愛すべき”チャラさ”がある
・知略に優れ、弁も立ち天才的なコミュニケーション能力を有する
・フットワークが軽く行動力の塊
・それでいてワルいことにブレーキがなく、勝つためなら手段を選ばない
用意周到さと簡単に諦めない根性を併せ持つ
その突飛な発想力で「事業成功までのロードマップ」を描き出すと
・本業の方は高いITスキルを有するガクに任せつつ
・自分は「金策だ!」「営業だ!」で特攻あるのみ!
大風呂敷を広げた流暢な語りと断られてもめげずに「ハイ次!」と超ポジテ
ィブな姿勢が観ていて小気味いいんですよね。
また目的のためなら仲間を切り捨てることも厭わないハルですが、最後には
口癖の「クハハ」という笑い声をあげると
「悪ぃ~♡」
の一言ですべてが許されるという憎めない愛されキャラがまた秀逸。
ハルの一挙手一投足から目が離せないという感じですね。
・他のキャラも魅力的
『美味しんぼ』では、ある2人の関係を「柳川鍋」に例えた話がありますが、
ガクはまさに「柳川鍋」の「ごぼう」のような存在です。
コミュ障でオタクっぽいし、自信がなさそうでオドオドしてるし・・・
でもハルとは対照的なキャラであるからこそ2人のコンビは輝きを放ちます。
それにハルが常人離れしたキャラなので、「足るを知る」常識人で誠実な人
柄のガクは作品に親近感や安心感を与えてくれるんですよね。
作中では、いつもハルの「世界一のワガママ」に振り回されて大変そうですがw
また途中で社員採用される高橋凜々(リンリン)も最高です!
彼女も要領が悪いゆえに就活では辛酸をなめた一人ですが、「株式会社トリ
リオンゲーム」のスタートアップに参加すると、持ち前の堅実さや緻密さで
ハルとガクの至らぬ穴を埋めていきます。
また採用時にいきなり「社長」に就任させられますが、会社の規模が大きく
なった後も数字とにらめっこしながらしっかり社長業を全うしていました。
それに自転車移動の姿が絵になるOLってやっぱ最高やろw
ハルの派手さだけでなく、ガクやリンリンの地道な努力が報われる様が描か
れているのも本作の魅力ですね。
ビジネスの世界は食うか食われるかの非情な競争社会ではあります。
でも入り口と出口にいるのはやっぱり「人間」なんですよね。
そんな感じで、ビジネスで彼らに関わっていく他の登場キャラたちも総じて
魅力的に描かれています。
・意表を突く展開とスピード感が痛快
肝心のビジネスの話では、「意表を突く展開とスピード感」が本作の魅力と
なっています。
作品の性格上「ご都合主義でイケイケどんどん」的なところは否めませんが、
この手の作品ではしっかり構想が練られていている部類だと思います。
象徴的なのが「AIネットショップ編」ですが、{netabare}まずは最初の事業として花屋
のチェーン会社に
「AIで購入者にピッタリなフラワーアレンジメントをセレクトしてくれる」
ネットショップの導入提案を行います。
・実は見た目だけそれっぽいサイトを作り、裏で(花屋でバイト経験のある)
リンリンが人力でセレクトしている「ハッタリAI」だった!
・試験導入で成果を出したところでこのカラクリを暴露w
→ 今度はチェーン店の熟練スタッフたちを動員して事業を拡大
・こうして資金と時間を稼いでいる間に本物のAIを完成させる
近年のビジネス界では
「『機を逸した100%』に価値はない。
不完全でもますは走り出し、時流に乗ること。
後のことは走りながら考える。」
といった考え方が主流になってきていますが、まさにこれを面白可笑しく描
いているなっと。{/netabare}
また「ソシャゲ編」では、ゲーム作りのノウハウやカラクリなどをしっかり
解説してくれるので、その辺りも為になって面白いです。
ちなみに本作のラインナップとしては
{netabare}【スタートアップ編】
・「プロローグ」
・「セキュリティ・チャンピオンシップ編」
・「AIネットショップ編」
【メディア帝国編】
・「ソシャゲ&タレント事務所編」
・「トリリオンTV編」{/netabare}
までがアニメ化されています。
(原作はまだまだ続いているようです。)
この世界には巨象「ドラゴンバンク」が君臨していて、ハルたちの前に何度も
立ち塞がってきます。
それでもハルたちは怯むことなく、「全部欲しい!」とワガママに挑戦し続け
「次世代へのゲームチェンジャー」
として大きなうねりを起こしていくのです。
その様をハルの強烈なキャラと矢継ぎ早に繰り出される新展開で勢いよく描い
ていくという、本作はそんな力強さと痛快さを兼ね備えた面白い作品だと思い
ます。
キャラデザは原作画の池上遼一先生色の影響で、ちょっと古くて濃い目で癖が
あるという感じですね。
個人的には馴染みある懐かしさがあり、結構好きでしたが。